魅力的なイベントを開催するイベント主催者のかたにお話をお聞きする「イベンターズインタビュー」。
第 1 回となる今回は、早朝フェスやSlide the City JAPANなど、独特でインパクトのあるイベントを複数企画されているハッピネスアーキテクトことフジモトタイチさんにイベント開催のきっかけや想い、それぞれのイベント開催の趣旨についてお話をお聞きしました。
ハッピネスアーキテクト フジモトタイチさん
◯開催イベント
ーー複数のイベントを企画されているイメージがあるタイチさんですが、これまで開催された、また企画されているイベントについて教えてください。
タイチ:今メインでやっているのは、早朝フェスとSlide the City JAPANですね。早朝フェスは、 5 月 27 日(水)にyahoo! JAPANで、Slide the City JAPANは 6 月 6 、7 日にお台場で開催予定です。
あとは、渋谷で働くOL向けのクラブイベントのヒルダンスを 4 月に、元旦フェスは 2016 年の元旦に行う予定です。
1 / 11 がノーパンツデー、もともとニューヨークのパフォーマンス集団が行っていたイベントを日本で立ち上げ、1 月の頭にノーパンツの日を行いました。
twitterキャンペーンにして、#ノーパンツをつけ、皆でノーパンツの写真を投稿したんですけど、それがすごくバズって。
次に走らせようとしているのが、ヒゲトーーク。完全にアメトークのパクリでテレ朝に怒られないか心配なんですけど(笑)
これは、参加者が求めるネタやトーク慣れしている人が話しているだけじゃ面白くないという事で、逆を取って主催者側に今聞きたいことをテレビ番組のようにリアルタイムで流していく、ある種、参加者をおいてく攻撃的なトークイベントなんです。
こちらは去年の 4 月くらいに立ち上げて、計 5 回くらい行っています。今年の 4 月に第 6 回目を予定しています。今後も多面的にやっていく感じですね。
東京のクリエイティビティが世界で勝負できるようになるといいなと、今後はそれをやりたいですね。
ーー継続で開催されている早朝フェスですが、もともと企画をしたのはどのようなきっかけだったのですか?
タイチ:とにかく満員電車が嫌いだったんです。
2013 年の 11 月くらいに日本に帰ってきてフリーランスを始めた時に、通勤電車に乗らざるを得なり、満員電車をなくすことはできないけど、空気を変えることはできないかなと思って。
同じような満員電車でもすごくテンションが高いのってフェス帰りじゃないですか。「今日の浜崎あゆみ超よかったよね」みたいな同じ気持ちを共有している人たちが集まる電車って、確かにギュウギュウで汗臭いけど、みんな顔を上げてテンションが高い。その空気は作れるのではないかと思い、朝フェスをやろうと思ったわけです。
ロンドンの友達が早朝フェスを主催していたので、「東京で開催したいんだよね」っていう話をし、ライセンスを取得し、現在世界でも 20 箇所くらい開催されてますね。
ーー早朝フェスは満員電車がきっかけだったのですね。発想のきっかけはそのような日常の課題とあわせて、海外からインスパイアされることも多いですか?
タイチ:もともとロンドンで会社をやってた時のつながりがあって、今は、そっちに軸を置いてます。
海外の人たちのアイデアとかコト・モノを日本に持ってきて、うまくジャパナイズしていくというか、ヨーロッパの文化だからこそ生まれる物って結構あるので、それを日本の文化に当て込めば面白い。日本の中では新体験になりますね。
自分が意識しているのは、ハッピネスアーキテクトって名前にもあるように、自分が発案者になるよりは、自分たちの周りにいる人たちを巻き込んでいき、一人では成し得ないこともいろんな分野のスペシャリストが集まれば、可能になる。確実に想像以上のものが生まれる。
グローバルシティとしての東京って、ものづくりはいいですけど、思想とかアイデアはまだまだドメスティックですよね。日本人っぽいけど、そのコンテンツが世界で生きるかというと意外に生きない。まずはいったん世界の感覚値を東京に持ち込んで、東京を舞台にそういう中から新しいものが生まれていく。それを今度は世界に渡していく。
そういう繋がりで、東京のクリエイティビティが世界で勝負できるようになるといいなと、今後はそれをやりたいですね。
ハードではなくソフトへ。ありのままのものをどう楽しむかでいいんだなって思いました。
ーー以前はロンドンで活動されていたのですね。過去の経験が現在のイベント企画に通じているように思うのですが、これまでの経歴について教えていただけますか?
タイチ:プロの都市デザイナーになりたいなと思って、大学で街づくりとか都市デザインの勉強をしていました。
自分が好きだったデザインを描く人たちってイギリス人が多かったので、一番好きな建築家がアーキグラムというイギリス出身のかたで、そのリーダーのピーター・クック氏がロンドンの大学院で教授をやっていたので、そこで勉強したいと思いロンドンの大学院にいったんです。その大学院は不合格だったので別の関係性の強い大学院にいったのですが。
イギリスの大学院では、ナイジェリアの都市計画とかジャカルタの都市デザイン、ブラジルでは文献調査とか、ロンドンでは今必要な都市計画とかをやり、インターナショナルプランニングっていう世界の街づくりの事例を比較しながら学んでいました。
その中で、きっかけになったのが、ジャカルタのプロジェクトです。
近年稀に見るスピードで発展している都市のすごくいい場所の中にスラムがあって、置いてけぼりをくらっている。ディベロッパーはなんとか壊してでも追い出したい。
毎年洪水がくる場所だったので、「ここに防波堤を立てて、スペースを開発させてくれ。そのかわり家賃安くていいマンションを建ててあげるよ」というプレゼンをしたんです。でも、そもそもスラムの人たちは洪水を問題だと考えていなかったんです。
彼らにとっては当たり前のことで、逆に低所得者層だからレジャー施設に遊びに行く事が出来なくて、洪水で水が溜まったところで、子供に泳がせたりするんです。それがすごくショックでしたね。
ハードを通じて人はどれほど幸せになるのだろう?
その頃から、ハードではなくソフトへ。ありのままのものをどう楽しむかでいいんだなって思いました。それがある種のきっかけになって、わざわざ大学院までいって勉強したけど、卒業するときには、俺はもう都市デザイナーにはならないっていう結論に達しました。
「一人一人が自分たちの夢を実現するために何ができるんだろう」って想いで会社をロンドンで立ち上げ、きっかけ作りになる立ち上げ資金を提供するって形で、クラウドファンディングをやり、サービスを展開したり、なんだかんだ 1 年半くらいやっていました。
でも、お金ってきっかけ作りにならないって後から気づいたんです。
走り始めた車のガソリンにしかならない。何かやろうかなと思っている人にお金を渡しても、もやもやしたまま。基本的に飲み屋かキャバクラに消えていく。何かやりたいんだよなって人のきっかけ作りって、お金じゃなくて人なんですよ。
そこでアイデアレベルのことをブレスト感覚で披露できる場所ってまだなくて、同じような思いの人たちがつながれるようなコミュニティを作っていこうと思いました。
最初はトークイベントとかピッチイベントとかをロンドンでやり、アイデアをシェアする。
次の課題が、その瞬間はすごく盛り上がるんですけど、その火ってすぐに消えていくから、一個一個、形にしていかないといけないなって思い、何かをやりたいなと思っている人たちに確実にその場を提供し、とにかくプロジェクトを走らせて一緒に行動していく俺はもうプレイヤーになろうと。
日本に戻ったのは、ビザとお金が無くなったからです。とにかくみんなにコラボレーションできる機会をあげたいという想いで走り、そのうち、どんどんジリ貧になって。家賃も払えないくらいになりました。
日本に帰るお金もない、どうしようってなった時に、ホームレス社長って企画をやったんです。
俺にできるのは、ホームレスっていう状況を使って、これまでにないレベルでいろんな人に会って、草の根レベルでつながって、日本でのプロデュースにつなげる。
380 人くらいのクリエーターとか面白い人に会って、泊めてもらったり、ホームレスなのに最初の一ヶ月でかなり太るっていう結果に(笑)この期間に早朝フェスの代表にも出会ったんです。いろんな助けがあってまぁ無事に日本に帰ってこれて、ここ 1 年半くらいの活動につながっているわけですね。
ロンドンでイベントやっていた頃は、いろんな国籍のチームで、スペイン人は主張が強いから、話をちゃんと聞いてあげる、フランス人には批判する場所を与えてあげる。
そういう時って、日本人がリーダーになるんですよね。日本人のまとめる力は世界一で、日本人って否定しないじゃないですか。そういう時って日本人がいないと回らなくて。この時のノウハウとかは今に生きてますね。
イベント作りっていう部分もあるんですけど、コミュニティ作りっていうのがベースにありますね。
ーーちなみに、イベントを発案するきっかけとかルールってありますか?
タイチ:特にルール的なものは敷いていないですね。やっぱりイベント自体が立ち上がる瞬間って誰かと話してますよね。今朝とかも、相方のアフロマンスさんと電車に乗ってる時に、アフロマンスカーって企画面白くない?みたいな(笑)。
アスファルトキャンプとかもそんな感じで、飲みながら、「僕アウトドア好きなんですけど、山に行くの超めんどくさいんですよね」ってバブルサッカーのいく君が言って、その発想面白いなって。都会でやればいいじゃんって。
普段遊んでる場所で一回寝てみたら、見方が変わりますよ。渋谷とか、普段飲んだりしてる時はおしゃれだなとか思うけど、いざ寝てみたら、なんか汚いなみたいな。そういう体験で、街を別の角度から愛せるようになったり。参加者も自分自身でそういうことに気づくことで、次は自分たちで何かやってみようと思うようになったり。
そんな感じでスライドして普段歩いている街を滑ってみたらどうだろうと。
集客を必要としないくらいバズってるイベントだけど、その人たちが街に来ることで、その街を好きになったらいいなと考えて。イベント会場でやるイベントじゃないからこそ、地域住民も巻き込んでストリートパーティーみたいなことができれば、ちょっと変わったエンタメからの地域創生にならないかとも考えたりしています。
Slide the Cityのゴールはソーシャルグッドなんで、もちろんビジネスとして成功することはもちろんなんですけど、ただ、たくさん人を集めて、収益を得るだけじゃなくて、もうちょっとソーシャルな空気は入れたいですね。
イベント作りっていう部分もあるんですけど、コミュニティ作りっていうのがベースにありますね。
ーーお話を聞いていて、企画されてるイベントの共通のテーマとして「普段見えているものを違う見方をしてみる」という考えがあるように感じました。
タイチ:そうですね。皆が当たり前のように感じている問題点や疑問点って山のようにある。0 から 1 を生み出す作業ってものすごく大変な作業だけど、マイナス 1 を 1 にできたらすごいおもしろい。ゼロイチ体験の 2 倍良いような感じがしますね。
ーーあとタイチさんに今回お会いして、ヒゲや帽子など個性的なファッションにもこだわりが現れているように感じたのですが…。やはりなにか意識されていることはありますか?
タイチ:ヒゲを生やし始めたのは、2013 年にホームレス社長を始めた頃から。ホームレスらしく!と意識して始めました(笑)そしたらあれよあれよとのびてきて。
チャンスを広げるため、チャンスを逃さないため。見た目で、覚えてもらう。見た目で、面白そうって思ってもらう。など意識していますね。
ーー今後開催する予定のイベントを教えてください。
タイチ: Slide the City JAPANが6月6、7日に東京お台場で開催されます。
あと早朝フェス@Yahoo! JAPANが5.27(水)に開催予定です。
作り手も参加者も垣根が無い、ムーブメントにした後にコミュニティにつなげるとこまでいきたい。
ーー今後、開催されるイベントを通じて実現していきたいこと、目指していきたいことはありますか?
タイチ:イベント軸だと、作り手も参加者も垣根が無い、ムーブメントにした後にコミュニティにつなげるとこまでいきたいなって想いがありますね。
誰かがリードはしないといけないとは思うけど、それぞれが考えて、楽しんで、イベントを自主的に引っ張っていく空気感を作っていければ、ムーブメントを超える何かになる。
みんなのインフラレベル、意識レベルにまで刷り込んでいければ。ラジオ体操級ですね。2、3年かけて目指していくレベルかなと。
個人で言うと、世界の人を楽しませるマルチメディアプラットフォーマーになりたいです。
早朝フェスとかSlide the Cityは正にそうなんですが、世界のイベントを日本に持ち帰って、日本の人脈で活かす。世界もすごい注目してくれていて、日本でSlide the Cityなんてできるの?って。でも、実現できた時には確実に注目してもらえると思うんです。
2016 年には、逆に日本のコンテンツを世界に発信していけるようになっている。世界の面白いコンテンツが僕らを通して、日本に入ってくることで双方向で、僕とアフロマンスっていうユニットが面白コンテンツの通訳者になる。僕らを通せば、確実に面白くなるっていう存在は狙っていますね。
イベント主催者はどうしても裏方で、僕もそれでいいと思っていたんですけど、もっとこの仕事って楽しいんだよってことを発信していかなければいけないなって。
大変だけど、出来たときの達成感は、関わってくれる人たちが笑顔で楽しんでくれてるだけで涙が出そうになる。打ち上げとか最高にお酒がおいしい。今年は、もうちょっと外に出ていかないと下が育たないねっていう話をしていています。アメリカのプロモーターみたいに地位を持ってて有名になりたいですね。
僕はね、 40 歳から自分のビール工場を持つっていう夢があるんです。ありとあらゆる想いとか経験とかノウハウとか知識とか全部ビールに注ぎたいんですよね。すごく自分勝手なバーをやりたいんですよ。僕が作ったビールしかでないバーで、ひたすら自慢話をするっていう(笑)
今回は早朝フェス、Slide the Cityを主催するハッピネスアーキテクトフジモトタイチさんにお話をお聞きしました。
都市デザイナーを目指しての渡英が、「ハードではなくソフト」という考えを経てイベントという手法に変化していくプロセスがとても興味深く、非常に共感を覚えました。
フジモトタイチさんありがとうございました!
ハッピネスアーキテクト フジモトタイチさんの開催イベント